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むだいしょう
無題抄
上村 松園
線上閱讀上村 松園《無題抄(むだいしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,105 字 · 5 頁
余技といえば、九条武子夫人を憶い出します。
九条武子夫人は、松契という画号で、私の家にも訪ねて来られ、私もお伺いして絵の稽古をしていられました。
武子さんの、あの上品な気品の高い姿や顔形は、日本的な女らしさとでもいうような美の極致だと思います。
あんな綺麗な方はめったにないと思います。綺麗な人は得なもので、どんな髷に結っても、どのような衣裳をつけられても、皆が皆よう似合うのです。
いつでしたか、一度丸髷に結うていられたことがありました。たいていはハイカラで、髷を結うていなさることは滅多にないので、私は記念に、手早く写生させて貰いましたが、まことに水もしたたるような美しさでした。
「月蝕の宵」はその時の写生を参考にしたのです。もちろん全部武子夫人の写生を用いたという訳ではありませんが……
大いなるものゝ力にひかれゆく
わが足もとの覚つかなしや
武子夫人の無憂華の中の一首であるが、私は武子夫人を憶い出すごとに、この歌をおもい、あの方のありし日の優しいお姿を追想するのであります。
大いなるものゝ力にひかれゆく……まことに、私たち人間のあゆみゆく姿は、大いなる天地の神々、大慈大悲のみ仏から見られたならば、蟻のあるきゆく姿よりも哀れちいさなものなのに違いありません。