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ぼんのうひぶんしょ

煩悩秘文書

林 不忘

線上閱讀林 不忘《煩悩秘文書(ぼんのうひぶんしょ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,705 字 · 173 頁

青空文庫

どうだな? 珍しいところであろうがな。」

出羽守はそう言って、弥四郎頭巾の間から、白い眼を光らせて千浪を見遣った。

はぐれ鳥

この文珠屋では、上等の客間なのであろう。八畳の座敷に三畳ほどの控えの間がついて、床には何か軸が掛かっている。

その前に大胡坐をかいた祖父江出羽守は、前に坐っている千浪へ、ちらちらと視線を送りながら、上機嫌だった。

秋に入って、照り続いた空模様は、どうやら今夜あたりから怪しいらしく、重い空気が暗い風となって吹き込んで来る。何か物売りの声が町を流して、この、日暮れ近い伝馬町は、江戸の代表のように、あわただしいのだった。

着衣から頭巾、それに着物の紋まで、何から何まで寸分違わぬ伴大次郎と祖父江出羽守と――まだこの祖父江出羽守を、良人大次郎とばかり思い込んでいる千浪は、

「でも、ほんとに、よくあそこでお眼にかかれました。あなた様が道場をお出になってからというものは、私は毎日のように家を空けて、お姿を慕って、江戸の町々をお探し申しておりました。今日こうしてお目にかかることのできましたのも父と、それから女髪兼安の引き合わせではないかと存じます。