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くまのでるかいこんち

熊の出る開墾地

佐左木 俊郎

線上閱讀佐左木 俊郎《熊の出る開墾地(くまのでるかいこんち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,070 字 · 31 頁

青空文庫

穏和な情緒を滅茶苦茶に掻き立てられた彼女は、何もかも掻きりたい興奮状態にあった。彼女はなおも泣き続けた。

巡査が来た時には夜が闌けていた。焚き火の傍に立って巡査は藤沢を訊問した。藤沢は、佐平に言ったと同じ理由を述べた。

「それでこの人は、おまえとは、おまえの外套を無断で借り着して行くような間柄だったのか?」

「はい。それは、十何年前からの友達で。」

「すると、全然、過失というわけだな?」

「でも、私は、罰を受けないと気が済みません。」

こういう言葉が交わきれている間に、佐平は、啜り泣いている吾亮の妻の方へ歩み寄った。

「家を出るとき、あの毛皮を着てたかね?」

低声にそう言って佐平は訊いてみた。

「今日は、朝出たきりでしたので……」

彼女は少しも藤沢を疑わなかった。彼の表面をそのまま受け取っているのだった。佐平は巡査のところへ引き返した。

「何にせ、熊だか人間だか、見分けのつかねえほど、まだ暗くなかったがな。」

佐平はこう彼等の会話の中に言葉を挿んだ。

「おい! おまえは黙っていろ。今ここで、いいかげんな嘘をつかれちゃ困るじゃないか。」

巡査は佐平の方に眼を光らせて言った。