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もゆるほお

燃ゆる頬・聖家族

堀 辰雄

線上閱讀堀 辰雄《燃ゆる頬・聖家族(もゆるほお)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,309 字 · 144 頁

青空文庫

ロッジのそとへ出ると、二台の自転車がそのハンドルとハンドルとを、腕と腕とのようにからみあわせながら、奇妙な恰好で、そこの草の上に倒れているのを彼は見た。

そのとき彼の背後からお嬢さんの高らかな笑い声が聞えてきた。

彼はそれを聞きながら、自分の体の中にいきなり悪い音楽のようなものが湧き上ってくるのを感じた。

悪い音楽。たしかにそうだ。彼を受持っているすこし頭の悪い天使がときどき調子はずれのギタルを弾きだすのにちがいない。

彼は自分の受持の天使の頭の悪さにはいつも閉口していた。彼の天使は彼に一度も正確にカルタの札を分配してくれたことがないのだ。

或る晩のことであった。

彼は彼女の家から彼のホテルへのまっ暗な小径を、なんだか得体の知れない空虚な気持を持てあましながら帰りつつあった。

その時前方の暗やみの中から一組の若い西洋人達が近づいてくるのを彼は認めた。

男の方は懐中電気でもって足もとを照らしていた。そしてときどきその電気のひかりを女の顔の上にあてた。するとそのきらきら光る小さな円の中に若い女の顔がまぶしそうに浮び出た。

それを見るためには、その女が彼よりずっと脊が高かったので、彼はほとんど見上げるようにしなければならなかった。