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ぶつりてきしゅうだんてきせいかく
物理的集団的性格
中井 正一
線上閱讀中井 正一《物理的集団的性格(ぶつりてきしゅうだんてきせいかく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,301 字 · 13 頁
そうして彼はそれに逆らってこそ働いたが、そのためには働かなかった。しかし幾千も幾千もの人間は確かに、こともなく、何も知らずにこの鉄のような時代に住んでいる。新しき思想は火花の閃きのように人の中に消えていく。またわれわれは現にそれを当然のこととして、一九〇〇年時代の建物の中に住んで平気である。……絵を描く喜び、色や太陽についての楽しみ、そういうものは一九〇〇年ごろを境として過ぎ去ってしまった。それと同じように、かつては――はるか昔のことであるが――その白壁が地の中から生えたと思われる、静かな家々も過ぎ去ってしまった。……今世紀の新しい壁は、ベトンを敷いた平面の上に、見知らぬ固い表情をもって立っている。何ものが豊饒な大地にふれることを妨げたのか、何ものが生命の源をふさいだのか、何びとも答えることはできない。何ものかが失われてしまった。それに気がついたものは人間のこころだけである。こころの不安に堪えずして目地を検べ、床を叩き、よろめきながら地下室に踏み込む。彼女は寒さに身を凍らし敷石の上にうずくまる。いつになったら意識が戻るのか、それまでは、そして一対の目が物におびえて空虚を見つめる時のくるまでは、人間のこころは故郷を失ったのである。