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ねことしょうぞうとふたりのおんな

猫と庄造と二人のおんな

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《猫と庄造と二人のおんな(ねことしょうぞうとふたりのおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,020 字 · 131 頁

青空文庫

いてくれたら、そうしてフンシが濡れていてくれたら、どんなに嬉しいであろうなどと思うと、眼が冴えて来て寝られないままに、リリーの寝息が聞えるか知らんと闇の中で耳を澄ますと、しーんと水を打ったようで、微かな音もしていない。あまり静か過ぎるのが気になって、枕から首を擡げると、窓の方は薄ぼんやりと明るいけれども、リリーがいる筈の隅ッこの方は生憎真っ暗で何も見えない。ふと思いついて、頭の上を手さぐりして、天井から斜ッかいに引っ張られている紐を掴んで、手繰り寄せると、大丈夫手答えがある。でも念のために電燈を付けて見ると、成る程いることはいるけれども、あの、拗ねたようにちぢこまって、円くなっている姿勢が、昼間と少しも変っていないし、食べ物もフンシもそっくりそのまま並んでいるので、又がっかりして明りを消す。そのうちに漸くとろとろとしかけて、暫くしてから眼を覚ますと、もういつの間にか夜が明けていて、見ればフンシの砂の上に大きな塊が落してあり、牛乳のお皿と御飯のお皿がすっかり平げられているので、しめたと思うとそれが夢だったりするのである。

だが、一匹の猫を手なずけるのは、こんなに骨の折れることなのだろうか。