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さるがしま

猿ヶ島

太宰 治

線上閱讀太宰 治《猿ヶ島(さるがしま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,768 字 · 12 頁

青空文庫

」

「そうか。」私は溜息をついた。「でも、この木は木曾樫のようだが。」

彼は振りかえって枯木の幹をぴたぴたと叩き、ずっと梢を見あげたのである。

「そうでないよ。枝の生えかたがちがうし、それに、木肌の日の反射のしかただって鈍いじゃないか。もっとも、芽が出てみないと判らぬけれど。」

私は立ったまま、枯木へ寄りかかって彼に尋ねた。

「どうして芽が出ないのだ。」

「春から枯れているのさ。おれがここへ来たときにも枯れていた。あれから、四月、五月、六月、と三つきも経っているが、しなびて行くだけじゃないか。これは、ことに依ったら挿木でないかな。根がないのだよ、きっと。あっちの木は、もっとひどいよ。奴等のくそだらけだ。」

そう言って彼は、ほえざるの一群を指さした。ほえざるは、もう啼きやんでいて、島は割合に平静であった。

「坐らないか。話をしよう。」

私は彼にぴったりくっついて坐った。

「ここは、いいところだろう。この島のうちでは、ここがいちばんいいのだよ。日が当るし、木があるし、おまけに、水の音が聞えるし。」彼は脚下の小さい滝を満足げに見おろしたのである。「おれは、日本の北方の海峡ちかくに生れたのだ。