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さるとびさすけ
猿飛佐助
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《猿飛佐助(さるとびさすけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 30,413 字 · 60 頁
すると、老人にわかに狼狽して、
「はや一番鶏の鳴声が……、やがて山里にげす共の悪声が喧しい。三町四方に蚤の飛ぶのも聴えるこの耳に、うるそうてならんわい」
と、言いざまに、煙の如く消え去り、さらばじゃという声は、遙か天井より聴えたが、それから毎夜乾の方に星の流れる頃には、必ず現われて、まず蝮蛇の頭をペロペロとくらったあと、鳥人の術の伝授に掛り、三年掛った。
そしてある夜、鳥居峠の蝮蛇も今宵がくらい収めじゃと、老人はいつも二倍の十匹を、それも春先きの良い奴ばかしを、尻尾も余さず平げたので、ついのぼせてしもうたのか、おびただしく鼻血を噴きだした。
驚いた佐助が、蛇の脱殻をまるめて師匠の鼻の穴に詰め込もうとすると、老人は、
「えい、見苦しゅうなるわい。鼻血が停った代りに、人が見て噴きだすわ」
と、振り払った瞬間、もう姿は見えず、
「――やよ、佐助、既にして汝は鳥人の極意を余す所なく会得せり。これ以上の師弟の交りは、雲雨に似てあやし。われ年甲斐もなく、鼻血など噴きだした余りの見苦しさに、思わず姿を消してしもうたが、これ即ち師弟の別れと思うべし。汝はや鳥人たり。