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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《獄中への手紙(ごくちゅうへのてがみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 頁
この節の野菜なしと来たらお話の外ですから。「この頃のような暮しだと、こわくない半日だの不安のない一時間が実にうれしいわね、玉のようね、だから、そういうとき、本当にたのしいことをしたいと思うのに、ダラダラ儲けた話でつぶれるとくやしいのよ」そんなことを云い乍ら、桜の鉢をいれかえたり、水仙の球根を植えたり、シャボテンに土をかけたりして、殆ど終ったら警報が出ました。
今、午後三時頃。二度目の解除。わたしは、そのたのしい数刻を尊重して小机をかかえこみ、瀧川という子は、わたしの上っぱりを縫いはじめました。風が出て来て、カナリアのチイチイチイ、チチチチチというメロディアスな声を吹きちぎります。
きのうは、朝六時にトラックが来て、春木屋の荷と人とをつんで茨城の田舎へ運びました。ここの家には今おやじと中学二年の弟とがいます。弟はずっとここから京華に通うでしょう、おやじは、東京にうちがなくなったから上京すればここに泊ります。「その代りあっちからお米や何かは運びますから」「その代りと云わなくたっていいさ、もって来てお貰いしなくちゃどうせならないにきまってはいても、ね」