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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《獄中への手紙(ごくちゅうへのてがみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 頁
九月十四日
きのうは、あんな装束で、お笑いになったけれども、帰りは大した降りで、すっかり体まで雨がしみとおり、顔を流れて、前方が見にくいほどでした。眼鏡はいろいろのとき不便ね。雨のしぶきが傘の布地をとおしてこまかくついてしまうのよ。
一般に女の装は随分かわりましたが、特にこの一ヵ月には、殆ど大抵元禄袖になりました。いい着物をぶっすりと切っているのが、一種の伊達めいて、面白いものですね。どんなところにもこういう心理があるところが、人間のおもしろい眺めかもしれず。
昔のように、袂に文をなげ入れるということはない当今だから、誰にとってもきっと便利の方が不便よりも多いのよ。
食べたいものと云えば、この頃の暮しは変ったものです。ガス節約ですから(十人で一円五十何銭)御飯は土間のへっついで炊いて、ガスは子供用に使うため、お茶さえのみません、朝夕だけ。あとは水。冬はこうは行きますまい。
電燈も凡そ半分迄。乾パン、うどん粉、うどんが半月分当ります。乾パンは小さく長方形のもの。私は好きでよくたべます。うどんは、いつも昼飯に。これはゆでたのを一寸いためてたべます。