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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《現代忍術伝(げんだいにんじゅつでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 頁

青空文庫

いゝかい。間宮クンは秘書だから、醤油ダルとその包みを持ちたまえ」

「フツカヨイのオレにムリだよ。秘書は箱根へついてからでタクサンだ」

「いけないよ」

半平は冷めたく云った。イタズラ小僧のように薄笑いをうかべていたが、その言葉は刃物のように冷めたかった。正宗菊松は自分が斬られたようにゾッとして、気の毒なフツカヨイの男を見やった。すると半平の冷たい声が、今度は彼に斬りつけてきた。

「正宗クンは天草商事の重役だからね。かりにもカシャクしちゃいけないよ。旅行中はそうなんだ。坊介クンは秘書、ボクは息子、近藤クンは娘、平山クンは女秘書、いゝかい。それが仕事なんだよ。社の命令によって、そうなんだから、だからね。いゝかい。一・二・三。今からボクは正宗半平さ。じゃア、お父さん、出かけましょうよ」

半平は自分の荷物を持つと、サッと立って歩き出した。甚しいマジメさが、彼の全身から発射した。有無を云わさぬ冷めたさ、督戦の鬼将軍の無慙な力がこもっている。人々はにわかに各々の荷物をとって歩きだした。

正宗菊松も二足三足歩きだして深呼吸をした。不思議な威圧である。年齢の差があるどころか、まるでアベコベの立場である。