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しょうじょうるてん

生々流転

岡本 かの子

線上閱讀岡本 かの子《生々流転(しょうじょうるてん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 297,521 字 · 586 頁

青空文庫

挨拶したら、さっさと引上げてしまおうとさえ思っています。

寮の老妻が駆け出して行って、池上にわたくしの来訪を告げている様子です。すると池上は笑み崩れるような顔になって、家の中に上って来ました。

「や、済まなかったね、蝶子さん。だいぶ待ったかね」

それから、これは番頭の嘉六の末の娘でおきみという。小間使風に使って欲しいという親の望みで、正月は三日過ぎたらこの寮へ通って来ることになっていたのだ。きょうはその初日だったので、御祝儀に浜の家で支那料理を奢って来たところだと言いました。

その娘は、いかにも律義にわたくしに挨拶したのち、すぐ池上のインバネスを畳むやら、お茶をいれ替えてわたくしに出すやら、全く忠実な小間使の仕事振りです。わたくしが遠慮するのにわたくしのコートまで丁寧に畳みかけて、

「おや、泥がつきましてございますね。初荷の車が撥ねかえしたのでございましょう。ちょっと落して参りますから――」

と言って、硝子戸の外の椽側へ出ました。確かにわたくしより年少の若い娘であります。

器量は色が白いだけでたいしたこともないけれど、その律義と初々しさが水仙の莟のようで、わたくしは何だか下から煽られているような気がいたします。