輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

しょうじょうるてん

生々流転

岡本 かの子

線上閱讀岡本 かの子《生々流転(しょうじょうるてん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 297,521 字 · 586 頁

青空文庫

そう――これでいゝのだ」

わたくしは怪しく悩ましい感じに撃たれ、「先生、それ、ほんとう」と訊かないわけにはゆきませんでした。すると先生は、はっきりした声で、

「えーえ、ほんとうですとも」

と言って、それから少時、黙っていたあと、「何もかも、ほんとうですとも」と言ったかと思うと、咽喉の奥で、しず/\と笑い出しました。

「ほ、ほ、ほ、ほ、ほ」「ほ、ほ、ほ、ほ、ほ」

それは先生が笑ったのでしょうか、木霊が笑ったのでしょうか。わたくしは先生の方を向くよりどこか他所の遠いところの見当に向いて、その笑いの正体を突き止め度い思いに駆られたほど、幽かに気高い笑いでした。わたくしは東京を出発するまえ葛岡が「先生の笑声は僕たちがじくざくしている世界より一段高いところで笑っている」と言ったのを思い出して、嘘ではないと気付きました。先生はどうかされた、普通にいう気狂いになられたのではあるまいか。そうかと思うと先生は、けろりとして、あたりを見廻して、

「もう晩に近いわね。――」

どうせこの宿の食事はひどいから、蝶子さんには、先生が何か作ってあげましょうと、足取りも静に距ての襖を開けて台所らしい方へ入って行きました。