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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《生死卍巴(せいしまんじどもえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 頁

青空文庫

「よい眺めだの」と、慶正卿が云った。

「花園のようでございます」

碩寿翁がすぐ応じた。

「こういう景色を見ていれば、悪事などしたくなくなるだろうな」

「まさにさようでございます」

「京助などという穏しい手代を、殺そうなどとは思うまいな」

「とんだところでとんでもないことを」

「が、安心をするがよい。あの男は私が助けてやった。今頃は貧しいが清浄な娘と、つつましい恋をしているだろう。……それはそうと千賀子殿」

「はい」と、千賀子は慇懃に云った。

「昔のあなたになれそうだの」

「殿様のお蔭にございます」

「それはそうと刑部老人」

「はい」と、刑部老人は云った。

「その物々しい白い髯は、そうそう苅ってしまってはどうか」

(おやおや)と、刑部老人は思った。

(俺ばかりが歩が悪いぞ。髯の悪口を云われたんだからな)

「殿様のご注文でございましたら、早速髯など苅りましょうとも」

「苅った髯は店へ並べるがいい」

「並べる段ではございません」

「それだけが本物ということになる」

「それだけが本物と仰言いますと?」

「お前の店にある他の物は、確かことごとく贋物のはずだ」

(いよいよ俺だけが歩が悪いぞ)

「そうばかりでもござりませぬがな」