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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《生死卍巴(せいしまんじどもえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 頁
「山岳へおいでなさりませ、何か得られるでございましょう」と、そう云った巫女の言葉の、占い通りにはなっていた。
(しかし俺に巫女が占ってくれた「何か」がはたして何であるか、それさえ知ってはいないのだ)
――で、醍醐弦四郎などに、敵対行動を取られるという、そういう理由はないものと、そう思わざるを得なかった。
(そうは思うものの醍醐弦四郎に、現在このように矢文を付けられ、あからさまなる敵対行動を、約束された上からは、用心しなければならないだろう)
で、茅野雄は四方を見た。
六月の山中の美しさは、緑葉と花木とに装われて、類い少なく見事であった。椎の花が咲いている。石斛の花が咲いている。槐の花が咲いている。そうして厚朴の花が咲いている。鹿が断崖の頂きを駆け、鷹が松林で啼いている。鵙が木の枝で叫んでいるかと思うと、鶇が藪でさえずっている。
四方八方険山であって、一所に滝が落ちていた。その滝のまわりを廻りながら、啼いているのは何の鳥であろう? 数十羽群れた岩燕であった。
高山の城下までつづいているはずの、峠路とも云えない細い道は、足の爪先からやまがたをなして、曲がりくねって延びていた。