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せいかつのなかにあるびについて
生活のなかにある美について
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《生活のなかにある美について(せいかつのなかにあるびについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,372 字 · 9 頁
単純に、美しさを生活の中にもちたい心持がまして来ている、とだけ云い切れまい。余りどこもかしこも荒っぽく殺気だっている明暮だから、せめて台所ののれんぐらいはと、仮に「こうげい」でそんなものでも買う人々の暮しは、現実にはその台所の戸棚に相当な食糧の補充も蓄えられている人々のことである。そもそものれんの発祥した庶民の暮しは、同じ荒っぽさに一きわむき出されているのだが、そういう生活の中では、一山いくらと札の立っている瀬戸物のなかからより出して来る茶碗が実にひどいものになっているという今日の情のこわい肌ざわりしかないのである。生活の中にある美しさについて云うならば、それはごくあたり前の、必要から幾箇かの皿小鉢、何枚かの盆をつかって暮している人々の、その皿に、その盆に、どんな暖い心がこめられているかというところこそ見られて行かなければなるまいと思う。そういう何でもないものが、十五銭の皿は、はい、こんなもんですよという風に生活の中に突き出されているか、それとも、十五銭なりにちょいとした可愛い人間らしい工夫がほどこされているか。その時代の人が、そのどっちの気分で生きているか、というところに問題があるのだと思う。