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いなかもの

田舎者

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《田舎者(いなかもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,181 字 · 26 頁

青空文庫

そうだと岸本は断言した。その証拠には、マダムはあの人の家に出入りしてるし、奥さんとも昔からの懇意であると、饒舌ってしまった。それが、彼等の狡猾な笑いを招いた。それこそ猶更、マダムと「ドラ鈴」とが怪しい証拠で、もう公然と第二夫人ではないか。そこんところに気付かないのは、さすがに学生さんは若い若い、というのであった。そして彼等から笑われると、岸本はなおやっきになって、明かに分りきってることをどうして説明出来ないかと、じりじりしてくるのだった。

固より、明かに分りきってるといっても、それは彼一人の気持からに過ぎないことではあったが――

あの人――依田賢造――と識ったのも、最近のことだった。郷里岡山の田舎の中学校を終えて、東京のさる私立大学の予科に入学して、愈々東京在住ときめて上京してくる時、その田舎出身の大先輩として、或る商事会社の社長をしてる依田賢造へ、紹介状を貰ってきたのだった。気は進まなかったが、紹介状の手前、思いきって訪れてみると玄関わきの狭い応接室に通された。日曜の朝の九時頃だった。長く待たされた後、依田賢造氏が黒い着物に白足袋の姿で出てきた。