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こうしゅうちんぶたい

甲州鎮撫隊

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《甲州鎮撫隊(こうしゅうちんぶたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,891 字 · 28 頁

青空文庫

と、印袢纏に、向鉢巻をした留吉は、松の枝へ、一鋏みパチリと入れながら云った。

お力は、簪で、髪の根元をゴシゴシ引掻いていたが、

「何よ」

「沖田さんのご介抱によく毎日……」

「生命の恩人だものね」

「そりゃアまあ」

「あの晩かくまっていただかなかったら、斬合いの側杖から、妾ア殺されていたかもしれないんだものね」

「そりゃアまあ……」

「それに沖田さんて人、可愛らしい人さ」

「へッ、へッ、そっちの方が本音だ」

「かも知れないわね」

「あっしなんか何んなもので」

「木の端くれぐらいのものさ」

パチリ! と留吉は、切らずともよい、可成り大事な枝を、自棄で、つい切って了い、

「ほいほい、木の端くれか、……と、うっかり木の端くれを切ったが、こいつ親方に叱られそうだぞ。……と、いうようなことはお預けとしておいて、木の端くれだなんて云わずに、どうですい、この留吉へも、……」

お力は返事もしないで、木間を隙して、離座敷の方を眺めた。

その離座敷では、沖田総司と、近藤勇とが話していた。

勇が来訪たので、お力は、座を外したのであった。

勇の説得

この離座敷へも、午後の春陽は射して来ていて、柱の影を、畳へ長く引いていた。