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しんようどうき
申陽洞記
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《申陽洞記(しんようどうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,175 字 · 11 頁
その声はしだいに近くなってきた。
どうも不思議な事だと李生は思った。こうした深山の中で、しかも夜になって警蹕する者は何者であろう。大胆不敵な強盗か、それとも妖怪の類か、とても普通の貴族大官ではあるまい。もしそうだとすると、こうしておることは危険である。これはどこかへ身を隠して、それを見届けたうえで、それに対する手段を考えなければならないと思った。彼はちょっと考えた後で、弓を持ってそこの柱へすらすらと登って、欄間から梁の上へ往った。
警蹕の声がすぐ入口に聞えて、紅い二つの燈が見えてきた。その燈に続いて数人の怪しい人影が見えたが、やがてそれが脚下の方で渦を捲いて静まった。李生は呼吸をころしてのぞいた。紅燈の燈はとろとろと燃えていた。三山の冠を被り、淡黄袍を著けて、玉帯をした者が神座へ坐って、神案に拠りかかり、その従者であろう十人あまりの者が、手に手に戟を持って階下の左右に別れて立っていた。冠を著た者の顔は蒼黒い大きな猿の顔であった。李生は階下の者の顔にも眼をやった。それも皆猿の顔であった。
果して妖怪の類であった。李生は矢を抜いて弓に添え、冠を著た妖怪を覘って放した。