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うみがめ

異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁

青空文庫

」

「はあ、少しばかり聞きました。あなたは門司の方に行っていたそうで……。」と、僕も正直に答えた。

女はすこし考えているらしかったが、やがてまたしずかに話し出した。

「あの市野という男は、わたくしに取っては一生のかたきなんです。殺すのも無理はないでしょう。」

僕はだまって聞いていた。

四

路ばたの草むらから蛍が一匹とび出して、どこへか消えるように流れて行った。ここらの蛍は大きい。それでも秋の影のうすく痩せているのが寂しくみえるので、僕もなんだか薄暗いような心持で見送っていると、女もその蛍のゆくえをじっと眺めているらしかった。

「なんだか人魂のようですね。」と、女は言った。そうして、また歩きながら話しつづけた。「兄からお聞きになっているなら、大抵のことはもう御承知でしょうが、わたくしは今年二十歳ですから、あしかけ七年前、わたくしが十四の歳でした。市野さんはこの川へたびたび釣りに来て、その途中わたくしの店へ寄って煙草やマッチなんぞを買って行くことがありました。時々には床几に休んで、梨や真桑瓜なんぞを食べて行くこともありました。そのころ市野さんは十九でしたが、わたくしは十四の小娘でまだ色気も何もありゃあしません。