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うみがめ

異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁

青空文庫

旅人はまだ二十四五ぐらいの若い男で、色の少し蒼ざめた、頬の痩せて尖った、しかも円い眼は愛嬌に富んでいる優しげな人物であった。頭には鍔の広い薄茶の中折帽をかぶって、詰襟ではあるがさのみ見苦しくない縞の洋服を着て、短いズボンに脚絆草鞋という身軽のいでたちで、肩には学校生徒のような茶色の雑嚢をかけていた。見たところ、御料林を見分に来た県庁のお役人か、悪くいえば地方行商の薬売りか、まずそんなところであろうと重兵衛はひそかに値踏みをした。

こういう場合に、主人が旅人に対する質問は、昔からの紋切り形であった。

「お前さんはどっちの方から来なすった。」

「福島の方から。」

「これからどっちへ……。」

「御嶽を越して飛騨の方へ……。」

こんなことを言っているうちに、日も暮れてしまったらしい。燈火のない小屋のなかは燃えあがる焚火にうすあかく照らされて、重兵衛の四角張った顔と旅人の尖った顔とが、うず巻く煙りのあいだからぼんやりと浮いてみえた。

二

「おかげさまでだいぶ暖かくなりました。」と、旅人は言った。「まだ九月の末だというのに、ここらはなかなか冷えますね。」

「夜になると冷えて来ますよ。