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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
それにしても、なぜ最初に伊平を怪しんで呼びとめたかと訊くと、唯なんとなくその挙動が不審であったからであると彼等は答えた。江戸馴れない山出しの中間が道に迷ってうろうろしていたので、挙動不審と認められたのも無理はないと八太郎は思った。しかもだんだん話しているうちに、番人のひとりは更にこんなことを洩らした。
「まだそればかりでなく、あの中間のかかえている風呂敷包みから生血がしたたっているようにも見えたので、いよいよ不審と認めて詮議いたしたのでござるが、それも拙者の目違いで、近ごろ面目もござらぬ。」
それを聞かされて、八太郎はまた眉をひそめたが、その場はいい加減に挨拶して別れた。その西瓜から蛙や髪の毛のあらわれた事など、彼はいっさい語らなかった。
稲城の屋敷にはその後別に変ったこともなかった。八太郎は家内の者を戒めて、その一件を他言させなかったが、この記事の筆者は或る時かの池部郷助からその話を洩れ聞いて、稲城の主人にそれを問いただすと、八太郎はまったくその通りであると迷惑そうに答えた。それはこの出来事があってから四月ほどの後のことで、中間の伊平は無事に奉公していた。