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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
そう判ると、わたし達もいささか拍子抜けの気味であった。
「うむ。冬坡君か。」と、わたしも言った。「今頃こんなところへ何しに来ていたのだ。夜詣りでもあるまい。」
「いや、夜詣りかも知れませんよ。」と、野童は笑った。「冬坡君は弁天さまへ夜詣りをするような訳があるんですから。」
なんにしてもその正体が冬坡と判った以上、私もむずかしい詮議も出来なくなったので、三人が後や先になって境内をあるき出した。野童は今夜の会の話などをして聞かせたが、冬坡はことば寡なに挨拶するばかりで、身にしみて聞いていないらしかった。わたしの家は町はずれで、他のふたりは町のまん中に住んでいるので、わたしが一番さきに彼らと別れを告げなければならなかった。
二人に挨拶して自分の家へ帰ったが、冬坡の今夜の挙動がどうも私の腑に落ちなかった。野童はなにもかも呑み込んでいるようなことを言っていたが、なんの子細があって彼はこの寒い夜ふけに弁天の祠へ行って、池のほとりにさまよっていたのであろう。しかし冬坡がこの頃ここらにも流行する不良青年の徒でないことは、わたしも平生からよく知っているので、彼がなんらかの犯罪事件に関係があろうとも思われない。