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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
「まあ、待て。わざわざ見届けに行くほどのこともあるまい。まだ後から誰か来るだろう。」
高原の屋敷へ来る者はかならずその道を通るとは限らない。前にいった新五番町や濠端一番町方面に住んでいる者が、近道を取るために通りぬけるのであるから、神南、堀口、森積の三人以外に、誰がその道を通るかと数えると、同じ方向から来る者のうちに石川房之丞があった。
「石川もやがて来るだろうから、その話を聞いた上のことだ。」と、織衛は言った。
そのうちに他の人々もおいおいに集まって来たが、石川はまだ見えなかった。これが常の場合ならば、遅参の一人や二人は除け者にして、すぐに歌留多に取りかかるのであるが、今夜にかぎってどの人も石川の来るのが待たれるような心持で、彼の顔を見ないうちは誰も歌留多を始めようと言い出した者もなかった。歌留多の会が百物語の会にでも変ったように、一種の暗い空気がこの一座を押し包んで、誰も彼もみな黙っていた。十畳と八畳の二間をぶち抜いた座敷の真ん中に、三つの大きい燭台の灯が気のせいかぼんやりと曇って、庭先の八つ手の葉にさらさらと舞い落ちる雪の音が静かにきこえた。