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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
「では、福井を呼んでよく詮議してみよう。」
彼としては差しあたりそのほかに方法もないので、すぐに福井をそこへ呼び付けて、貴公は確かにその鐘というのを見届けたのかと重ねて詮議することになった。福井はたしかに見届けましたと答えた。
「万一の見損じがあると、貴公ばかりでなく、組じゅう一統の難儀にもなる。貴公たしかに相違ないな。」と、組頭は繰返して念を押した。
「相違ござりませぬ。」
「深い淵の底にはいろいろのものが棲んでいる。よもや大きい魚や亀などを見あやまったのではあるまいな。」
「いえ、相違ござりませぬ。」
いくたび念を押しても、福井の返答は変らなかった。彼はあくまでも相違ござらぬを押し通しているのである。こうなると、組頭もその上には何とも詮議の仕様もないので、少しくあとの方に引退っている三上と大原とを呼び近づけた。
「福井はどうしても見届けたというのだ、貴公等はたしかに見なかったのだな。」
「なんにも見ません。」と、三上ははっきりと答えた。
「わたくしは大きい魚に出逢いました。大きい藻にからまれました。しかし鐘らしいものは眼に入りませんでした。」と、大原も正直に答えた。