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しらねのふもと
白峰の麓
大下 藤次郎
線上閱讀大下 藤次郎《白峰の麓(しらねのふもと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,238 字 · 45 頁
蔓が絡む、茨の刺は袖を引く、草の実は外套からズボンから、地の見えぬまで粘りつく。
辛うじてかなりの高所へ出た。栂の根元の草の中に三脚を据える。前に見えるのは悪沢と赤石で、右に近いのは御馴染の白河内らしい。他は近所にある小山に遮れて、残念ながら目に入らない。二時間ほどにして山を下った。
「官員サンの黄八丈は、草の実が一ペエだ、俺らハタいてくれるぞよ」とよしえは丈よりも高い箒を持って来た。囲炉裡の側で昼食をたべる。昨夜と同じ里芋汁だ。昨夜も今朝も、薄暗らがりのなんとも思わなかったが、昼間見ると、茶碗の底に泥が沈んでいた。
二十二
池の茶屋を出たのは一時過ぎであったろう。これからは平凡な下り道ではあるが、荷が重いので休み休みゆく、道には野菊、蔓竜胆など、あまた咲き乱れて美しい。彼方是方に落葉松の林を見る。奈良田のそれに比して色劣れど、筆執らまほしく思わるるところも少からずあった。池の茶屋より二里あまりにして、四時頃平林の蛭子屋という宿に着いた。
「農事に忙しい時嫁は風邪で寝ています。一向お構い申されませぬ」とクドクドいいながら、六十ばかりの婆さんが洗足の水をとってくれる。