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しろあり

白蟻

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《白蟻(しろあり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 54,099 字 · 106 頁

青空文庫

しかし、そうなると、時折ふと眼が醒めたように、神経が鋭くなる時期が訪れてくる。そのときになると、あの荒涼とした物の輝き一つない倦怠の中から、妙に音のような、なんとなく鎖が引摺られてゆくのに似た、響が聞えてきて、しかも、それが今にも、皮質をぐるぐる捲き付けて、動けなくでもしてしまいそうな、なにかしら一つの、怖ろしい節奏があるように思われるのだった。それが、彼らを戦かせ、狂気に近い怖れを与えて、ひたすらその攻撃に、捉えられまいと努めるようになった。そこで、日常の談話の中でも、口にする文章の句切りを測ってみたり、同じ歩むにしても、それに花文字や傾斜体文字でも感じているのではないかと思われるような、一足一足、鶏卵の中を歩むような足取りをしたりなどして、ひたすら無慈悲な単調の中からあがき抜けようとしていた。そうして、それに縋りついて、無理にも一つの偏執を作らなかったならば、なんら考え事もない、仕事もなく眼も使わない日々の生活には、あの滅入ってくるような、音のない節奏の世界を、身辺から遠ざける工夫とてほかになかったのである。

けれども、そうしているかたわら、彼らの情緒からも感情からも、しだいと固有の動きが失せてきて、終いには気象の変化や風物の形容などに、規則正しく動かされるようになってしまった。