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しらゆきひめ
白雪姫
久生 十蘭
線上閱讀久生 十蘭《白雪姫(しらゆきひめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,723 字 · 21 頁
一年に平均四〇、五〇呎というから、一里ぐらいのところを、だいたい三年がかりで降りてくる計算になる。
河というが、流れているようなようすはどこにもない。大時化の大洋の波が、なにかの拍子にだしぬけに凍りついてしまったといった感じで、十尺以上もある琅色の氷の畝が、起伏に変化を見せながら、はるばるとひろがっている。
「おお、きれいな風景」
ハナが安っぽい感歎詞をならべだしたが、阿曽は面白くもなんともない。見るかぎり、生きて動くものの姿はなにひとつなく、無限の寂寥を宿した死後の世界を想像させるだけで、絵になるような風景ではなかった。
まもなく、氷の畝にとりついて、一つずつ越えだしたが、これは楽なものではなかった。氷の畝の腹はツルツルしていて手がかりがない。匍いあがれるのはまだしもだが、さもないやつは、氷の腹に一歩一歩足場を刻まなくてはならない。そんなことをしていたために、ひどく手間どった。
そこまではまだよかった。しばらく行くと、断層と曲流がいりまじって、足の踏み場もないようなむずかしいところへ出た。氷河床の傾斜のぐあいで、氷河が奔流になって流れくだった名残らしく、氷河の表面が勝手な方向へ歪んだり捻れたりし、癇癪でもおこしたような乱脈な荒れを見せている。