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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《白髪鬼(はくはつき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 頁
生地獄
わしの話を聞いた丈けでも、敏感な人はすぐ気がつく筈だ。
それを、まるでうそみたいな話じゃが、わしは少しも気づかなかったのだ。瑠璃子に溺れ切ていたわしは、彼女のこととなると、もう盲目も同然で、カラ意気地がなかったのだ。
それは兎も角、このわし達夫婦の引続いての長患いが、あの恐ろしい破局への不気味な前奏曲であった。わしの運命のけちのつき始めであった。瑠璃子の妙な腫物が全快して、ヤレヤレと思う暇もなく、今度は病気どころではない。前代未聞の地獄の責め苦が、わしの上に降りかかって来た。
生地獄
皆さん。今までその点に触れる機会がなかったが、わしはとっくに世を去った、一匹の幽鬼に過ぎないのだ。この世に籍のない死人に過ぎないのだ。なぜといって、わしは一旦は本当に死んでしまって、誰もそれを疑わなかったからだ。生き返りはしたけれど、わしは大牟田敏清と名乗って再び人前に出なかったからだ。
今のわしは、年齢は左程でもないのに、濃い髪の毛が一本残らず、銀の針みたいな白髪になっている。それはわしが、一度死んで、地獄の底から生き返って来た、一つのしるしである。つまりわしは、あの時以来、一匹の白髪の鬼と化し去ったのだ。