輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《白髪鬼(はくはつき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 頁

青空文庫

歩み出たかと思うと、わしは天地がひっくり返る様な衝撃を感じた。足の下の抵抗がなくなってしまったのだ。もろくなっていた小岩が折れて、砲弾の様な勢いで、数十丈の脚下へ落て行ったのだ。

わしは一瞬間、何もない空中に立っている様な感じがした。

無論悲鳴を上げたに相違ない。併し、わしの耳は已につんぼになっていて、我声を聞く力もなかった。

空中に突っ立ったかと思う次の瞬間には、わしの身体は鞠の様に、崖にはずみながら転落していた。

皆さん、これはわしの実験談だから信用してもよい。死ぬなんて訳のないことだ。痛さも怖さも、ただ一瞬間で、その高い崖を落て行きながら、わしはもう夢を見ていた。あれが気が遠くなるというのじゃろう。目も耳も皮膚も、無感覚になってしまって、頭の中丈けで、墜落とは全く別の、薄暗い夢を見続けていた。

しかも一方では、底なしの空間を、無限に墜落して行く感覚が、幽かに幽かに残っているのだ。例えて見れば、我々が眠りにつく瞬間、人の話声を聞きながら、夢を見ていることがある。丁度あれだ。墜落の意識と頭の中の夢とが、二重焼付けの活動写真の様に、重なって感じられるのだ。