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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
線上閱讀本庄 陸男《石狩川(いしかりがわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 頁
――あるいはそうかも知れない。しわがれた低い声で、あやしげな抑揚をつける女の声がぶつりと消えると、そこの白々しい空虚な時間には、いやな回想が一ぱい漲るのであった。アメリカ会社のフレガレット型外輪汽船に貨物のように積みこまれ、辿り着いたところは、冬から春に移りつつあった。渡るべき津軽の海では潮の流れが渦巻いていたのである。くろ潮とおや潮、そのしおが啀みあう大洋には濃い霧が乳色の層をつくっていた。蒸気船でさえ航行し兼ねると云う季節であった。そしてアメリカ人の無理に抵抗出来ず、彼らはムロランで下船した。陸に残された仲間のものは徒歩で日を重ねながらやって来た。約束のユウフツの港を距ること二十里の手前――そのため彼らは予定した陸行の踏みわけ道をそれだけ多く歩かねばならぬ破目におちた。
背負える荷物にも限度があった。傭うべき駄馬の背も見つからなかった。従って、当面の必要なもの以外を和船の回漕に委ねたのも止むを得ない事情であった。唯それらの品々は、少しく遅れても何とか凌げるという程度のものであった。長い考慮の末、必要でないものはただの一品も持って来ていなかったからだ。