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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

線上閱讀本庄 陸男《石狩川(いしかりがわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 頁

青空文庫

と誰かが云った。そういう楽観した言い方は涼風のようであった。人々の肩のうしろで戸田老人が長い眉毛をぴくぴく動かしていた。「なんなら、――」と彼は腰を浮かして、きょろきょろして云い足した、「身どもが論判にあたるも苦しくない――」

人々は笑って「まア、まア」と云った。残念ながら、予定の通り、彼はそれを思いとどまった。

むなしい気位に、そんなに拘泥しなければならないのか。日毎に体制をととのえて行く新しいあちらの権力は見えないのだ。すッぽりと抜けて来て、抜けざるを得なかったあの日の感慨をいまだに湛えていた。

「おそれながら――」と阿賀妻は何かいらいらして云った、「善は急げで明早朝――サッポロまでお伴いたさせて頂きます」

そう云い切るときに彼の口調は独断めいて響くのであった。よく考えるとそれは、梃子でも動かぬ理づめになっていた。しかし彼が云うと何か重苦しく暗いのだ。

翌朝早く彼らは出かけた。まだ秋の夜がそこえらに漂っていた。水霜のおりた空気は肌にしみるのだ。しばらくは吐く呼吸も白くもや立って見えた。

主従はだまって歩いた。何となく不機嫌であった。寝不足だけでは無かった。