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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

線上閱讀本庄 陸男《石狩川(いしかりがわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 頁

青空文庫

「どうした」と彼は云った。

鋸屋は黒い塊りになって動かなかった。

「どうした?」と高倉は声を高めた。咽喉がかさかさして、ひび割れたような嫌な声になっていた。

「――――」

「おい!」と彼は脇差をおさめて、男の肩を抱いた。

「し、び、れ、ました」

そういう相手を高倉は引き縋るのだ。雲斎織りの上ッぱりはかぱかぱに凍っていた。その前襟をわし掴みにしてずるずると穴にはいって行った。さか捲く風が粉雪をあびせかけた。彼らの疲れた身体では、温かみを感ずるほど掘り上げることも出来なかったのだ。

二人は身体をすり寄せた。

高倉は干し飯を取りだした。「食え――」とうめいた。鋸屋は腕を投げだした。が、指は凍結して動かないのだ。彼はわけの分らぬ声を絞って叫んだ。高倉は干し飯を掌にのせて彼の口もとに差しだした。すると鋸屋は顔をよせ、がぶりと噛みついた。高倉ははッと手をひいた。掌にまで噛りつかれていた。

「どうした?」

「ねねっちゃ、不可ねえ、ねね、ねむっちゃいけねえ」

細いこえがうたうようにそう答えていた。

凍結が一刻々々彼らの身体を痺れさせている。雪と風と、野と夜とが、彼らの体温を奪い取りつつある。