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しんぴこんちゅうかん

神秘昆虫館

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《神秘昆虫館(しんぴこんちゅうかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,803 字 · 213 頁

青空文庫

町方でも苦心して捕えようとしたが、捕えることが出来なかったそうだ。「ある素晴らしく高貴な方が、蔭ながら保護をしているからだ――」ある方面での噂であった。町方で探ったところによると、蛭子三郎次、布袋の市若、福禄の六兵衛、毘沙門の紋太、寿老人の星右衛門、大黒の次郎、弁天の松代、これが彼らの名であって、弁天の松代が一党の頭で、そうして松代は美しい、若い女だということであった。彼らが水上を駛る時は、宝船に則った軽舟を用い、また陸上を走る時は、彼ら独特の「手組輿」――そういうもので走ったそうである。

その怪盗の七福神組が、今や走って来たのであった。

手組輿とは変なものではあるが、要するに七人が七人ながら、心と体とを一つに食っ付け、一緒の行動を取ろうがために、彼らの案じた人間輿で、意味深いものでもなさそうである。しかし七人が心身を一にし、一致の行動をとるのであるから、自由の活動、敏速の歩行、これは出来るに相違ない。

何んと云う速さだ! 走って来る!

と、突然女の声がした。「おっと待ったり、お止めお止め!」「合点」と一団止まってしまった。同時にバラバラと手組輿が崩れ、ヒラリと飛び下りたは一人の女で、髪は結綿、鬼鹿子、黄八丈の振り袖を纒っている。