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しんろのまき

神鷺之巻

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《神鷺之巻(しんろのまき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,672 字 · 54 頁

青空文庫

誰も、ここで、薙刀で腹を切ったり、切らせたりするとは思うまい。

――しかも、これを取はずしたという時に落したのであろう。女の長い切髪の、いつ納めたか、元結を掛けて黒い水引でしめたのが落ちていた。見てさえ気味の悪いのを、静に掛直した。お誓は偉い!……落着いている。

そのかわり、気の静まった女に返ると、身だしなみをするのに、ちょっと手間が取れた。

下じめ――腰帯から、解いて、しめ直しはじめたのである。床へ坐って……

ちっと擽ったいばかり。こういう時の男の起居挙動は、漫画でないと、容易にその範容が見当らない。小県は一つ一つ絵馬を視ていた。薙刀の、それからはじめて。――

一度横目を流したが、その時は、投げた単衣の後褄を、かなぐり取った花野の帯の輪で守護して、その秋草の、幻に夕映ゆる、蹴出しの色の片膝を立て、それによりかかるように脛をあらわに、おくれ毛を撫でつけるのに、指のさきをなめるのを、ふと見まじいものを見たように、目を外らした。

「その絵馬なんですわ、小県さん。」

起つと、坐ると、しかも背中合せでも、狭い堂の中の一つ処で、気勢は通ずる。安達ヶ原の……