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わたしはだれ?

私は誰?

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《私は誰?(わたしはだれ?)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,584 字 · 14 頁

青空文庫

然し、快楽というものは不安なものだが、そして常に人を裏切るものであるが、(なぜなら快楽ほど人に空想せられるものはないから)私は書くことに裏切られたとは思われぬ。私は力が足らなかった。書き得なかった。そういう不安がないこともない。然し、書いた。書くことによって、書かれたものが実在し、書かないものは実在しなかった。その区別だけは、そして、その区別に私の生活が実在していたのではなかったのか。

私は然し、生きているから、書くだけで、私は、とにかく、生きており、生きつゞけるつもりでいるのだ。私は私の書きすてた小説、つまり、過去の小説は、もう、どうでも、よかった。書いてしまえば、もう、用はない。私はそれも突き放す。勝手に世の中へでゝ、勝手にモミクチャになるがいゝや。俺はもう知らないのだから、と。

私はいつも「これから」の中に生きている。これから、何かをしよう、これから、何か、納得、私は何かに納得されたいのだろうか。然し、ともかく「これから」という期待の中に、いつも、私の命が賭けられている。

なぜ私は書かねばならぬのか。私は知らない。色々の理由が、みんな真実のようでもあり、みんな嘘のようでもある。