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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁

青空文庫

か。

いずれにせよ、これらの手順だの吉野大衆との交渉は、あらかじめ、北畠親房や四条隆資らが、運びをつけていたもので、さらにここから、高野へお遷りの議もあったが、その議は止み、ここ吉野の山上を、以後、

吉野朝廷

の地と、さだめられることとはなった。――いわゆるこれが、南朝である。――それにたいして、京都の朝廷を、北朝と、世人はいった。

京都では、暮の二十九日、なんとなく殺伐な気の失せない中にも、一道の平和らしさが流れていた。尊氏の母堂やら妻子眷属が、丹波から迎えとられて、都入りしていたのであった。

年は明けた。

北朝の、建武四年

南朝では、延元二年

おかしなことだが、こう真二つに、ひとつ国土が割れ、二つの年号を称え、それぞれ異なる正月を迎えたのだった。

日本の分裂症時代、“南北朝”とよばれる畸形な国家へ突入して行った年を、この春とすれば、以後、その大患はじつに、五十七年間もつづいたのである。

これまでで、もうたくさんであったろうに、まだこの先、いぜんたる血みどろやら謀略の抗争を半世紀もやりつづけなければならないとは……。

たれが予想したろうか。

たれもそんな予想はしなかった。