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しゅうざんず

秋山図

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《秋山図(しゅうざんず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,580 字 · 15 頁

青空文庫

その時は元宰先生も、とうに物故していましたし、張氏の家でもいつの間にか、三度まで代が変っていました。ですからあの秋山図も、今は誰の家に蔵されているか、いや、未に亀玉の毀れもないか、それさえ我々にはわかりません。煙客翁は手にとるように、秋山図の霊妙を話してから、残念そうにこう言ったものです。

「あの黄一峯は公孫大嬢の剣器のようなものでしたよ。筆墨はあっても、筆墨は見えない。ただ何とも言えない神気が、ただちに心に迫って来るのです。――ちょうど龍翔の看はあっても、人や剣が我々に見えないのと同じことですよ」

それから一月ばかりの後、そろそろ春風が動きだしたのを潮に、私は独り南方へ、旅をすることになりました。そこで翁にその話をすると、

「ではちょうど好い機会だから、秋山を尋ねてご覧なさい。あれがもう一度世に出れば、画苑の慶事ですよ」と言うのです。

私ももちろん望むところですから、早速翁を煩わせて、手紙を一本書いてもらいました。が、さて遊歴の途に上ってみると、何かと行く所も多いものですから、容易に潤州の張氏の家を訪れる暇がありません。私は翁の書を袖にしたなり、とうとう子規が啼くようになるまで、秋山を尋ねずにしまいました。