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あきぞらはれて

秋空晴れて

吉田 甲子太郎

線上閱讀吉田 甲子太郎《秋空晴れて(あきぞらはれて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,291 字 · 19 頁

青空文庫

彼がひょいとそれに乗りうつると、今度はバケットが梁にしばりつけられた怪我人のそばへ寄って行った。もう危険なふらふらした鎖につられた鉄材がわきへのけられていたから平気でそばに寄れるのである。一男の手は風のように早く動いて職工頭をしばってある細引をほどいて、そのぐったりした体を両腕で抱いた。体の重さで、彼はバケットの中でよろめいた。起重機はすぐにバケットをぐうっと上へ持ちあげ、ゆるく右の方へ廻転しはじめた。

その時、今まで職工頭をのせていた梁は支えきれなくなって、がらがらとあっちにぶつかりこっちにぶつかり、真逆様に墜落して行った。見ている人たちの髪の毛はさか立った。

二人を乗せたバケットが自分等の前までさがって来た時、監督をはじめ板張の床の上に立っている人々は、我にもあらず、一斉に歓声をあげた。その中に平吉の声もまじっていた。彼は監督とならんで、バケットの中に山田を抱いている伜の顔を一心に見つめていた。平吉の眼には涙があふれていた。

それを見ると一男も何かぐっとこみ上げて来て、わけの分からない涙が頬を伝って、抱いている人の顔へ落ちた。と、急に抱いている山田の体が重くなったような気がした。