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かがくじょうにおけるけんいのかちとへいがい

科学上における権威の価値と弊害

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《科学上における権威の価値と弊害(かがくじょうにおけるけんいのかちとへいがい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,966 字 · 10 頁

青空文庫

一方、無批判的な群小は九十九プロセントの偉大に撃たれて一プロの誤りをも一緒に呑み込んでしまうのが通例である。権威の大なる危害はここにあるのである。このような実例は科学史上枚挙に暇ないほどである。ニュートンが光の微粒子説を主張したという事がどれだけ波動説の承認を妨げたかは人の知る所である。またラプラスが熱を物質視したためにエネルゲチックの進歩を阻害した事も少なくない事は史家の認める所である。あえて昔に限った事はない、現在でもそういう例は沢山あろうと思う。大家と称せらるる人の所説ならばずいぶんいかがわしい事でも過信されるのは日常の事である。甲某は何々のオーソリチーであるとなれば、その人の所説は神の託宣のように誤りないと思われるのが通例である。想うにこれらは権威者の罪というよりはむしろ権威者の絶対性を妄信する無批判な群小の罪だと考えなければなるまい。もとより一般から権威と認められる人がその所説を発表し主張するについては慎重でなければならぬ事は勿論であるが、如何なる人でも千慮の一失は免れ難い。万に一つの誤りをも恐るるならばむしろ一切意見の発表を止めねばならない。