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かがくしゃとよみせしょうにん
科学者と夜店商人
海野 十三
線上閱讀海野 十三《科学者と夜店商人(かがくしゃとよみせしょうにん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,858 字 · 8 頁
首をもちあげて、あたりをキョロキョロ眺めてみると馬鹿に明るい――というよりか大変な眩しさであった。恐らくは明るさの密度の点では銀座街もこれには及ぶまいと思われた。縁日の商人は、陰影のない照明をやるのに照明学に従って間接照明法を用いず電球を裸にむき出した儘の直接照明法で、これに成功しているのであった。その代り電柱の上のポール、トランスは今や過負荷のために鉄心はウンウン呻り、油はジュウジュウとあぶくを湧き立てて対流をはじめ、捲線の被覆は早くも黄色い臭いをあげて焦げつつあった。尤もこの勇敢なる裸電球の照明法は行人の瞳孔を極度に縮少させ、商人が売っている品物のあらを発見し得るほど充分永く、行人の注視を許さないという商人の商略から来ていることだった。
科学者はこの人波をわけて通るために生ずる恐ろしい人間抵抗を思ってウンザリした。そして彼の実験室にあるコロイドの一分子が、高熱せられたるビーカーの中にあって、如何にもがきつつ同様の圧迫と恐怖に苦しんでいるかを思いやることが出来た。
科学者は溜息をついて、側を見ると、そこにはファラデーの暗界の如き夜店が眼にうつった。