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いのうはりまのかみ

稲生播磨守

林 不忘

線上閱讀林 不忘《稲生播磨守(いのうはりまのかみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,172 字 · 29 頁

青空文庫

播磨 (ぎょっと身を押し反らして)やっ! 抜いたな!

郁之進 (狼狽をきわめて)いえ! 抜いたのではござりませぬ。ひとりでに鞘走りして、これは、何とも申訳ない粗相を――。

播磨 いや、抜いた抜いた! 抜いたついでだ。見てやる。これ! 見せろっ!

郁之進 いえ、いえ――。(逃げようとする)

播磨 かまわぬ見せろというに!

と刀を取ろうとする途端、不意に、何ものか乗り移ったごとき郁之進、すらりと右手に景光を抜き放つ。

加世 あれ!

郁之進 家宝の一刀に由なき傷をつけたのみか、こ、この私めが、あろうことか、殿に対して害心を蔵するようなかの奎堂の言い草。彼をこのままにさしおいては、臣下の一分が立ちませぬ。この郁之進の胸が納まりませぬ。おのれ! 久保奎堂を真っ二つに――。

憑きものでもしたように、抜刀を提げたまま、よろよろと廊下へ出ようとする。

播磨 待て! (追い縋って留める)

郁之進 (争って)いえ、この多門三郎景光、はたして凶相か吉相か、久保奎堂の身体に問うてみるのですっ! 殿、お放し下さいっ。

刀を振り被って行かんとする。立ち塞がる播磨守を払い退けようとして、その拍子に、まるでひとりでに手が動いて、横殴りに一刀深く斬りつける。