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けいばのいちにちについて
競馬の一日に就いて
菊池 寛
線上閱讀菊池 寛《競馬の一日に就いて(けいばのいちにちについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,018 字 · 10 頁
午前中は慎しむこと
午前中は慎しむこと
朝から競馬場へ駈けつける。直ぐに穴場へ飛びこむ。馬券を握ってスタンドへ出る。スタートが切られて、ゴールになって、しかし自分の買った馬は不幸惨敗を喫してしまう。それから曳馬でも見てまた直ぐ穴場へ入って馬券を買って……。
そんな具合に朝のうちから馬券に熱くなっている人を見ると、見ている方で却ってはらはらする。
競馬の番組の仕組と云うものは、関東と関西とでは多少違うが、どっちにしても特殊レースとか大レースとか云った類いのものは、殆んど午後の競走にしているのが普通である。それを朝のうちから二度も三度も馬券に滑ったりすれば、相当に気持が腐って、愈々その日じゅうでの興味あるレースとか大レースとかの時には、まともな勝馬の鑑定力さえ失ってしまう。そうなると益々気持が腐る。時には焦立たしいような気持にさえなる。
元来が競馬は楽しみに行くべきものだ。それが少しも楽しいものでなくなるなどは賞めた事ではない。
損してもいい一定の金額などをきめて行ったにしても、午後の競走の八競馬あたりには、もう最後の二十円しかなくなってしまったなんて事になれば、気を入れてみたい所なのにそうも行かない、味気ない心にならざるを得ない。