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たけのさとびと
竹乃里人
伊藤 左千夫
線上閱讀伊藤 左千夫《竹乃里人(たけのさとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,338 字 · 29 頁
ことを知らぬという調子であったから、日夕の飲食にも始終趣向趣向といって居った、まして二、三人の会食でもやるとなれば、趣向問題が湧返ったものである、振ったの振わぬのと翌日の談話にまで興を残したくらいであった、予は随分度数多く参勤した方であるが、文章や歌俳についてこれは得意だなどという話はついに聞かなかったけれど、根岸へ西洋料理屋が出来て、客に西洋料理を御馳走することが出来また一品でも取寄せて食うことが出来るといっては、そんなことをしきりと得意がって居られたり、また骨抜鰌は根岸のが甘いなといえば、これは近頃得意さなどと悦ばれたり、こんな調子で些細なことにもすぐ興に乗って面白がられる、何事によらず三、四の人が集って興に入る時といったら、真に愉快な風に見えるので、集った人も深く愉快を感ずるのが常であった、ある時などよほど可笑かったことがある。
たしか明治三十五年の春であったと思う、追々と病体衰てくるので、人々種々と慰藉の道を苦心して居る時であった、予も夕刻かけて訪問すると、河東、寒川の両君が居られて、きょうは高浜が、女義太夫を連れてくるから聞いてゆけとのことであった、先生もやや興に乗ってきているので、おひるからはすこぶる工合がよいとのことで、しきりと談笑していられた。