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わらうあくま

笑う悪魔

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《笑う悪魔(わらうあくま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,687 字 · 55 頁

青空文庫

「ウ、フ、乙女と来たか、古風で良いね」

「外に適当な日本語は無いよ」

「物凄いな、――その乙女が千種のフィアンセでもあるのか」

「黙契だけだよ、俺ならドンと当って砕けるが、兄貴はジェントルマンだから、女を口説くなんて、下等な隠し芸は無い」

「下等な隠し芸は良いな。俺もチョイチョイその隠し芸を試みるが、成功率は零コンマの三パーセント位かな、いまだに独り身なのはその為だ」

「呆れた満十だ、早く女房でも持って郵便貯金でも心掛けちゃどうだ」

「残念乍ら、相手が無いよ、ガード下の光ちゃんは、とうの昔に愛憎を尽かして居るし、本社の受付嬢にも小当りに当って見たが」

「間抜けだな、――不義はお家のきつい法度だ、社内で変なことをすると、容赦もなく首だよ」

「安心しなよ、受付嬢はまるっ切り相手にしないから。会計の女史が下らない事を言い触らすもんだから、俺は東京ポスト社中のやくざ扱いだ」

二人の漫談は際限もなく弾みます。後ろの方には瓦斯ストーヴが燃え盛って、隣の校正部からは、原稿とゲラ刷を読み合せる、一種のメロデーが、物淋しく響いて来るのでした。

宵の編集室は、思いの外に閑散でした。