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かさおりはんくろう

笠折半九郎

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《笠折半九郎(かさおりはんくろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,004 字 · 26 頁

青空文庫

それは半九郎にとって全く思懸けぬ問題であった。

「先日城中で、貴公は火事場の恩賞について麻苅たちと話をしたそうだな」

「拙者から持ち出した訳ではないが、その話ならした」

「貴公そのとき、火事場の働きで恩賞にあずかるのは、火消人足も同様だと云ったそうだが、相違ないかどうか聞きに来たのだ」

半九郎は平手打ちを喰ったような気がした、麻苅久之助に云った言葉が、今やまるで違う意味をもって、しかもかなり重大な内容を帯びて返って来たのだ。

「如何にも、そういう風なことは云った」

彼は出来るだけ静かに説明しようとした。

「そういう風なことは慥に申したが、しかしまた貴公が云った通りではない、言葉は似ているが意味は違う」

「どう違うか聞こう」

「拙者は自分のことを云ったのだ、各々も耳にしていると思うが、あのとき拙者だけは恩賞のお沙汰がなかった」

「それが貴公には不服なのか!」

いちばん若い長谷部伝蔵が叫んだ。

「……そうではない」

半九郎は自分を抑えて続けた。

「そうではないんだ、周りの者がそれを云うんだ、拙者は自分の為すべき事を為しただけで、恩賞の有無などは些かも考えてはいない、それなのに周りの者がいつまでもその評判をするんだ、あのときもそうだった。