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むらさきだいなごん
紫大納言
線上閱讀坂口 安吾《紫大納言(むらさきだいなごん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,899 字 · 26 頁
昔、花山院の御時、紫の大納言という人があった。贅肉がたまたま人の姿をかりたように、よくふとっていた。すでに五十の齢であったが、音にきこえた色好みには衰えもなく、夜毎におちこちの女に通った。白々明けの戻り道に、きぬぎぬの残り香をなつかしんでいるのであろうか、ねもやらず、縁にたたずみ、朝景色に見惚れている女の姿を垣間見たりなどすることがあると、垣根のもとに忍び寄って、隙見する習いであった。怪しまれて誰何を受けることがあれば、鶏や鼠のなき声を真似ることも古い習いとなっていたが、時々はまた、お楽しみなことでしたね、などと、通人のものとも見えぬ香しからぬことを言って、満悦だった。垣根際の叢に、腰の下を露に濡らしてしまうことなど、気にかけたこともないたちだった。
そのころ、左京太夫致忠の四男に、藤原の保輔という横ざまな男があった。甥にあたる右兵衛尉斉明という若者を語らって、徒党をあつめ、盗賊の首領となった。伊勢の国鈴鹿の山や近江の高島に本拠を構えて、あまたの国々におしわたり、また都にも押し寄せて、人を殺め、美女をさらい、家を焼き、財宝をうばった。即ち今に悪名高い袴垂れの保輔であった。