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むらさきだいなごん
紫大納言
線上閱讀坂口 安吾《紫大納言(むらさきだいなごん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,899 字 · 26 頁
小笛を奪った覚えの者は、名乗りでてくれ。太刀も衣もいらないが、小笛だけが所望なのだ。その代りには、おまえたちの望みのものを差上げよう。あの小笛には仔細があって、余人にはただの小笛にすぎないが、私にとっては、すべての宝とかえることも敢て辞さないものなのだ。おまえたちが望むなら、私は、あしたこの場所へ、牛車一台の財宝をとどけることも惜しがるまい」
ひとりの者がすすみでて、まず、物も言わず、大納言を打ちすえた。と、ひとりの者は、うしろから、大納言の腰を蹴った。大納言はひとつの黒いかたまりとなり、地の中へとびこむように宙を走って、焚火のかたわらにころがっていた。
「望みのものをやろうとは、こやつ、却々、いいことを言うた」ひとりが大納言をねじふせて、打ちすえながら、言った。「牛車に一台の財宝があるなら、なるほど、あしたこの場所へとどけてうせえ。ぬすびとが貰ったものを返そうなら、地獄の魔王も亡者の命を返してくれよう。まず、ぬすびとの御馳走をくえ」
彼等は手に手に榾柮をとり、ところかまわず大納言を打ちのめした。衣はさけ、飛びちる火粉は背に落ちたが、すでに、大納言は意識がなかった。