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むらさきだいなごん
紫大納言
線上閱讀坂口 安吾《紫大納言(むらさきだいなごん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,899 字 · 26 頁
「わたくしは人の世の者ではございませぬ。月の国の姫にかしずく侍女のひとりでございますが、あやまって姫の寵愛の小笛を落し、それをとって戻らなければ、再び天上に住むことがかないませぬ。不愍と思い、それを返して下さりませ」
「はてさて、これは奇遇です」と、大納言は驚いて答えた。「私の祖父の家来であった年寄が、月の兎の餅を拾って食べたところ、三ヶ日は夜目が見えたという話ならば聞き及んでおりましたが、月の姫の寵愛の笛をこの私めが拾う縁に当ろうなどとは、夢にも思うてみませんでした。なるほど、あなたの笛であってみれば、もとより、お返し致さぬという非道のある筈がございましょうか。けれども、このような稀有の奇縁を、ときのまのうちに失い去ってしまうことは、夢の中でもない限り、私共の地上では、決して致さぬならわしのものです。まず、ゆるゆると、異った世界の消息などを語りあうことに致しましょう。さいわい、ほど近い山科の里に、私の召使う者の住居があります。むさぐるしい所ではありますが、あなたの暫しの御滞在に不自由は致させますまい」
天女はにわかに打ち驚いて、ありありと恐怖の色をあらわした。