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さいきこうい
細木香以
線上閱讀森 鴎外《細木香以(さいきこうい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,332 字 · 45 頁
文淵堂所蔵の「狂歌本朝二十四孝」「狂歌調子笛」等は早く嘉永六年に印刷せられたものである。ただそれが職業となったのである。しかしこの職業は幾何の利益をも齎さなかった。
これに反して所謂庵室は昔馴染の芸人等の遊所となった。俳優中では市川新車、同市蔵、同九蔵、板東家橘等が常の客であった。新車は後の門之助、家橘は後の五代目菊五郎である。香以は今芸人等と対等の交際をする身の上になって、祝儀と云うものは出さぬが、これに饗する酒飯の価は聊の売文銭の能く償う所ではなかった。何時頃からの事か知らぬが、香以の家の客には必ず膳が据えられ、菜は塩辛など一二品に過ぎぬが、膳の一隅には必ず小い紙包が置いてあった。それには二分金がはいっていたそうである。香以はまた負債に困められて、猿寺の収容陣地から更に退却しなくてはならなくなった。これが香以の四十一歳になった年である。
文久三年の春であった。親戚某が世話をして、香以は下総国千葉郡寒川の白旗八幡前に退隠した。寒川は漁村である。文字を識って俳諧の心得などのあるものは、僅に二三人に過ぎない。香以は浜の砂地に土俵を作らせ、村の子供を集めて相撲を取らせて、勝ったものには天保銭一枚の纏頭を遣りなどした。